アクサクまぶらない

音楽について書きます。

2020年個人的ベスト ノイズ編

皆さんいかがお過ごしでしょうか?

今年はCOVID-19が流行ってしまったので例年と比べて遊びに外出した数がかなり減りました。音源を入手できるレコード店、音楽を生で身をもって体感できるライブハウス......もっと楽しめる予定だったのにと後悔しきれない悔いがチリも積もれば山となる。実際ライブに行かなかった空白期間が半年以上あって寂しかったです。

最初のうちは「Current 93にイントネーションが似てる!」と勘違いしていたのに。Cronaca Neraを「コロナ禍ネラ」と勝手に親父ギャグを連想したりもしていました。貴重な人生の活動期間の一部がみるみるうちに自粛で削られていく悲しみよ。

本題に移りますが、

「再発以外で今年2020年にリリースされたもの」

に絞りました。再発で「これは!」とピンと来る良質なリリースはいくつかありましたが泣く泣く掲載しませんでした。

なお英語以外の文字の関係で一部のリンクがはてなブログの仕様上途切れてしまい、そのままでは飛べない可能性があります。お手数ですがその際は一度コピペしてみてください。


12,Plagues – Parasitic Symbiosis

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Label:Nefarious Activities

Discogs

https://www.discogs.com/Plagues-Parasitic-Symbiosis/release/15760867

Nefarious Activitiesではお馴染みのミニCDrでのリリース。それに合わせた小さい紙ジャケットが物珍しくて可愛らしくも感じる。開始すぐ高音でノイズが泣き喚く。吐き捨てるような声も合流しいいところでプツリと途切れてしまう。そしてBの単音を一定の間隔で弾丸のように発射する、全体的に歪んでいるが幻想的な空間に放り出される。ここは一体ディストピアなのかユートピアなのか?おそらくネイティブでも聞き取れないほどエフェクターで加工された言葉はパワエレの様式美だろうか。

11,Institution D.O.L. – The Thelema Tales

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Label:TORM Ent.
Discogs

https://www.discogs.com/Institution-DOL-The-Thelema-Tales/release/14833131

 

オーストリアのインダストリアルプロジェクト。今回はアレイスター・クロウリーが堂々と6パネルデジパックのジャケットを飾っている。ムードをよく演出しているピアノは2020年に同レーベルTORM Ent.から出たコンピレーション、Tormentum Volume I(AlfarmaniaのKristian Olssonがアートワークを担当!)にもトリとして参加しているWolfgang J. Ederが演奏。2015年から2019年にかけてイタリアとオーストリアで製作されたそうだ。ダークでゴージャスなコーラス隊が歌う場面があるのだが打ち込みだろうか?一方で歌モノとして聴けるトラックもあり。最後は神秘的なダークアンビエントでおしまい。

 

10,Throat – Bareback (Stripped & Remasked)

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Label:Kaos Kontrol

Bandcamp

https://ihatethroat.bandcamp.com/album/bareback-stripped-remasked

Discogs

https://www.discogs.com/Throat-Bareback-Stripped-Remasked/release/15760845

 

フィンランドのノイズロックバンドが18年に出したアルバムのリミックス盤。Government Alpha、Black Leather Jesus、Sshe Retina StimulantsからHimukalt、Linekraft、Concrete Mascara、Jaakko Vanhalaなどとラインナップを拝見すればノイズファンはメンバーの豪華さに驚くだろう。なお元のアルバムに金属的なノイズパートを含む曲も存在する。原曲をノイズの漆黒のインクで重ね刷りしている。

 

9,Crawl Of Time – Operation Black Widow

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Label:Fusty Cunt

Bandcamp(Chondritic Soundから同年2020年に再発されたもの)

https://chondriticsound.bandcamp.com/album/operation-black-widow-2
Discogs

https://www.discogs.com/Crawl-Of-Time-Operation-Black-Widow/master/1790483

 

アメリカのTerror Cell UnitのSamuel Torresによるパワエレ。「暴君と奴隷(最大の戦争)」、「束縛する絆」などの題名が並ぶ。持続する低音、それに重なる流暢な語り。地下の洞窟で灯り代わりの蝋燭片手に一人ポツンと佇まるようだ。声が消えた途端ドリルで掘り進めていく。物騒な争い事を遠くからテレビ中継でポテトチップスでも食べながらソファーに横になり、のほほんと監視している、平和な日常を過ごしている一個人としてはそんな気分だろうか。

 

8,Edge Of Decay – Riistettyjen Antologia

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Label:Aussaat

Bandcamp

https://edgeofdecay.bandcamp.com/album/riistettyjen-antologia

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Edge-Of-Decay-Riistettyjen-Antologia/release/15832097

 

最近はVigilantism名義でFreak AnimalよりCDを2枚出すなど活発なフィンランドのノイジシャン。そんな彼が国を跨いでドイツのAussaatからリリース。曖昧なハーシュの煙に奇妙な声が時々視界に見えてくる。同国期待のKovanaも2曲ボーカルで参加している。個人的には夢のようなコラボだ。コンロが点火し始めているようにチリチリした歪んだノイズと融合した声は何処か悲しげなインパクトを含んでいる。

7,Form Hunter – Form Hunter

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Label:Found Remains

Bandcamp

https://foundremains.bandcamp.com/album/form-hunter

Discogs

https://www.discogs.com/Form-Hunter-Form-Hunter/master/1737181

 

Weston CzerkiesとBreaking The WillやKjostadのStefan Auneによる2人組アメリカンハーシュユニットによる記念すべき1stアルバム。できる限り空間を埋め尽くしたいという僅かなペンキの塗り残しも許さない意欲が伝わってくる。如何にも真っ向に直接的な表現を用いているだろう。Found Remainsからリリースされているアルバムはモノクロのジャケットが大半を占めているがこのアルバムは風景写真がよく似合っている。

6,Herukrat – Darkness Over Najaf 

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Label:Total Black

Bandcamp

https://totalblack.bandcamp.com/album/darkness-over-najaf

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Herukrat-Darkness-Over-Najaf/release/14708020


イスラム教に焦点を当てた最近勢いのあるハーシュ/パワエレプロジェクト。激しい銃の打ち合いが始まる。皮切りから物騒なことだ。そして喉の奥から歪みエフェクターを噛んだようなノイズフレーズが行ったり来たりリピートする。野太い声からアウトプットされる叫びも自然と同化していく。Found Remainsから同年2020年に出たタトゥーに身を包んだジャケットが目印のSongs Of Religious Devotionも内容が濃いので合わせて聴いてみてほしい。

 

5,Maskhead – Bizarre Offerings

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Label:Antipatik Records

Bandcamp

https://antipatikrecords.bandcamp.com/album/maskhead-bizarre-offerings-cd

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Maskhead-Bizarre-Offerings/release/15409690

 

フィンランドの匿名ノイズプロジェクト。全身をラバーに包まれたジャケットが購買意欲を煽る。悲鳴のような高音がいきなり耳をスパイクシューズで蹴ってくる。ノーガードだったので危ない。そして女性の声のサンプリングでクールダウンしたかと思えば、さっきよりは慣れたのか衝撃が少ないもののノイズの光線を直撃。しかし油断してたらもっと激しいのが襲ってくるぞ?大音量でノイズのビームを浴びてみたい欲望を持った自分にはぴったりだ。果てにはその反動で派手に吹っ飛んでみたい。保証は必要なので「意識を失わない、建物の壁を壊さない程度に」と注釈を付けるけど。

4,Haus Arafna – Asche

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Label:Galakthorrö

Bandcamp

https://hausarafna.bandcamp.com/releases

Discogs

https://www.discogs.com/Haus-Arafna-Asche/master/1793390

 

待望の新作が登場。このアルバムのリリースをきっかけにBandcampにも降臨した。ちなみにドイツ語の歌詞の内容的にいけないのかSpotifyでは2曲だけExplicitマークが付けられている。あまり鉄の香りがしないビートがタイミングを計算するように規則正しく破裂したと思えば、その次に映像作品の登場人物が疑問を持つシーンで流れていそうなシンセのメロディが夜の水面に浮かぶ。その次には歪ませたノイズとここぞと狙った頃に登場するボーカルがパズルをはめるように組み合わさり、パワエレ芸術が完成する。スタイルのレパートリーは多いのか?確かめてみよう。

 

3,Aprapat / Kovana / Ahola & Silander / Häkki – Kolari II

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Label:EI ARMUA

Bandcamp

<Aprapat>
https://aprapat.bandcamp.com/album/v-a-kolari-ii
<Kovana>
https://kovana.bandcamp.com/album/v-a-kolari-ii-kovana

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Aprapat-Kovana-Ahola-Silander-Häkki-Kolari-II/release/15798969

 

フィンランドのノイジシャン4組によるコンピレーション。Pentti DassumとJaakko VanhalaによるHäkkiは置いておきここ最近名前を聞き始めたアーティストばかりだ。Aprapatは数秒の楽曲サンプリングからエネルギーを絞り出すようなノイズと金属音の融合を披露してくれる。Kovanaは2020年にFreak Animalからカセットを出し、この先も期待すべき。ハーシュの山から湧き出る女性パワエレ。Ahola & Silanderはソフトなダークアンビエント。Häkkiはヨレヨレ系で混乱状態に陥りそうだ。Freak Animalからも2020年にTerässinfoniaというフィンランドのシーンを総括したコンピが2枚に分けてリリースされたが、これも地域ごとに今のシーンを知りたい人にお勧めのアルバムの一つ。

2,Dead Eye Terrorist – Building A Hell

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Label:Phage Tapes 

Bandcamp

https://deadeyeterrorist.bandcamp.com/album/building-a-hell

Discogs

https://www.discogs.com/Dead-Eye-Terrorist-Building-A-Hell/release/16272530

 

Bandcampには他に野良猫支援の為の一曲が存在するが、Discogsにも当作品一作しか掲載されていない謎のアーティスト。Instagramのアカウントが存在し、vimeoに1分程度の短めのMVも投稿されている。事故現場のように高音が唸る、見事に完成された美学に基づいたハーシュ&パワエレ。時々割り込んでくる声が待ち遠しくなる。一発目から強烈なインパクトを与えてくる。密度と内容のボリュームは抜群。詳細を知っている人がいたら是非教えてください。某サイトには「私はスペインにいます」との書き込みがあったけど...

 

1,Salò Salon – Culte Du Moi

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Label:L. White Records

Bandcamp

https://salosalon.bandcamp.com/album/culte-du-moi

Discogs

https://www.discogs.com/Salò-Salon-Culte-Du-Moi/release/15417143

 

ドイツのデスインダストリアル兼ダークアンビエントアーティスト。モーリス・バレスによる小説3部作、Le Culte du Moi(自我礼拝)からタイトルを引用したと思われる。荒れた雨雲から今にも雷が降臨してきそうな緊迫した緊張感が張り詰める。しかし外に干してある洗濯物の事など忘れてしまいそうな凛々しさも共に手を繋いでいる。リバーブが効いた反響する場所で奏でる闇の芳香剤。是非ともコンクリート打ちっぱなしの部屋で1人不安になりながら体育座りで聴き、しくしくと涙を浮かべたい。


説明は割愛しますが以下のアルバムも好内容でした。

Taeter with Sektor 304 – The Hermeneutics Of The Hunt Has Gone Full Circle

Grunt – Spiritual Eugenics
Escuadron De La Muerte – Bastion XXIII
Caligula031 – Case Chiuse - Volume 1

STAGGH – Shining Path

Women Of The SS – Femme SS Fatale

[Code/Neda] – Isolation

Shame – White Man

 

今年2020年の年間ベストは以上です。特に年も終わりそうな頃に突如現れたDead Eye Terroristのデビューが印象に残っているというか。これからも応援してゆきたいです。ワールドワイドに様々なレーベルから出してほしい。もしライブも行うなら是非来日してほしいと願ってます。スペインといえばGyakusatsu、Tube Tentacles、Brutalomaniaの来日公演が印象深いしそれに続いてくれ。期待しかない。

本文でもいくつか紹介しましたが、今年は世界各地から出たノイズのコンピレーションが豊作だった気がします。各レーベルごとに個性あふれるラインナップが多数。

ご存知の人も多いかもしれませんがここでBandcampでこの手の音源を探す時に便利なタグを紹介します。「Noise」、「Industrial」だと大雑把だし「Harsh Noise」だとワイドに探ってしまいハーシュ色の薄い、または全く無いものも引っかかってしまう。一方で「Power Electronics」は割とちゃんとパワエレが引っかかってくれます。「Death Industrial」は意外と穴場だったりします。使ってみて。ただしこれらのタグが付いてない隠れノイズも勿論あります。SNSやサイトから飛ぶなど頑張ってください。

まとめてみた感想、正直フィンランド勢を贔屓しちゃったかもしれない。まあそこはあくまでも"個人的ベスト"だから甘く見て許してやってください。Freak Animalが自国のシーンの発展に貢献してるなと実感します。流石Deathspell Omegaでパワエレ界だけではなくブラックメタルシーンでも知名度のあるMikko Aspa。

来年こそはライブに行きまくりたい願望があります。そしてノイズの音源を取り扱うレコードショップにも何回も行きたい。

それでは良いお年を!来年が良い年になりますように。

 

2020年3月15日追記

年末にリリースされた作品の中から気になって今手元にある作品を紹介します。記事を書いた後に出てしまったので。

 

Swollen Organs – Forced Affection

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label: Nil By Mouth

Bandcamp
https://swollenorgans.bandcamp.com/album/forced-affection


アメリカのパワエレ、デスインダストリアル、そしてハーシュノイズプロジェクト。主に2016年から2019年に録音された音源。テーマはマスターベーション、レイプ、「逸脱した」セックスだそう。アートワークから滲み出るいかがわしい極悪っぷりの背中には思わず感心してしまうだろう。赤いインクを塗った上にテープを貼りアザだらけの痛々しいジャケットを固定している。インクがテープからはみ出ているので手が汚れそうで、所有しているのに開封する勇気が湧かない(綺麗好きなもんで)。最初から太陽が完全に隠れてしまい陰の部分だけを表現したような、悪だくみを行っているかのようなハーシュ。そしてウィスパーでセクシーな声が乗ったプロペラが優雅に回転するかのようなノイズが登場。


Human Larvae – Methods Of Submission II

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Label:Cipher Productions

Bandcamp
https://humanlarvae.bandcamp.com/album/methods-of-submission-ii
Discogs
https://www.discogs.com/ja/Human-Larvae-Methods-Of-Submission-II/release/16950561


2005年から活動しているドイツのアーティスト。2017年に同レーベルから出たMethods Of Submissionの続編。録音自体は2018年だそう。黒を基調にした再生ボタンを押さずともとも湧き出てくるノイズの世界観を、辺り一面首がもげるまで勢いよく見回したい。パッケージは革のような物体でできている。ノリでくっついていて剥がさないと開封出来ない凝った仕組み。女性の喋り声が淡い色彩を思い出すノイズに乗車する。誰かと会話しているのだろうか?映画のワンシーン?気になるところだ。リズムよくループするノイズに渋い声も見所。

 

以上です。では!