アクサクまぶらない

音楽について書きます。

VERFÜHRERVERGELTER – [gelöscht]



こんにちは。

今回はドイツの友人のVVさんのアルバムを紹介させていただきます。まずは一曲一曲聴いてみた感想から!

 

01 Intro

脳みそをかき混ぜられてしまいそうな一見お茶目なイントロ。恐怖感というよりも屋敷に仕掛けられたギミックめいたものを感じる。

 

02 [geloescht]

冷静さとひんやりさを兼ね備えたハーシュ。日本の新世代の主に東京でライブ活動するノイズアーティストのサウンドを連想させられる。勿論彼なりのオリジナリティも存在。

 

03 [geloescht]

視界を覆うような歪んだダークアンビエント。一定のリズムでゆらゆら揺れていくのが心地よい。うっすらと聞こえる金物が風鈴のように風情があり、急須で入れたお茶で一服したいところ。目を瞑りながら瞑想しつつ聴くのもありなわびさびを感じる一曲。

 

04 [geloescht]

あたり一面歪んだサイケデリックな風景が見えてきそうな音。やがて広大な廃墟に一人取り残される。スプリングリバーブだろうか?反響音がなんでも実現できるとはりきってしまう夢だと気づいた夢のようで、リスナーの口元が思わずニヤついてしまうだろう。濃厚な鉄分補給を行いましょう。5分あたりの怪獣の鳴き声みたいなシンセと体当たりしよう!

 

05 [geloescht]

開始直後に高音域が攻撃を行なってくる。こういったのはたまらない!その後は高音を少し抑えつつモーターがウィンウィン回るような展開を見せてくれる。腹痛をさまようかのような境界線のミニマルさが癖になってしまう。

 

06 [geloescht]

びよーんというシンセの遊び心溢れる音が小動物と触れ合っているかのよう。背後で唸るドローンが3Dメガネの効果のように迫力を増している。まるで対義語が並んでいる感触。

 

07 [geloescht]

まるでビットクラッシャーのようにデジタル的に歪ませたかのような音。虹色、目に残る残像、真夏の猛暑、熱中症

 

08 [geloescht]

耳に強い息を吹きかけられているかのようなダークアンビエント桃源郷はすぐそこだ!とはりきって走りたくなる。

 

09 [geloescht]

柔らかめのグミを噛んでいるような口の中の感触。体の真ん中に癒しの電流を流されているようだ。最後はこれでチルりましょう。

 

 

ここで4つの質問をしてみました。

 

使用機材を教えてください。

VERFÜHRERVERGELTERはバッテリー駆動の機材のみを使用しています。こうして、いつでもどこでも自由自在に操ることができます。サウンドの軸は、KORG Volca BeatsとKORG Montron Delayで、ダートとアナログアーティファクトを加えています。 ヒューマンエレメントの代替品は、2 つのGen-X1 Stylophoneとエレキギターです。 私の演奏スタイルには、包丁とバイブレーターが含まれます。 これらはすべて、EHX SuperegoやCarolina Guitars Météoreなどのさまざまなエフェクトペダルによって破壊され、再形成され、ねじれつつ新たな形態になります。

 

 

アルバムのテーマは?

タイトル[gelöscht]は、より広義な意味で「削除された」、「消去された」または「失われた」「忘れられた」と訳されます。 私たちはそれぞれ、埋もれた記憶、抑圧された経験、つまり消されたものを持っています。 私の音は魂の奥深くまで掘り下げ、これらの消去された断片を表面に戻します。 それは私たちの手の届かないところにある忘れられ抑圧されたものとの対決ですが、それでも私たちに影響を与え、私たちを支配し、重荷を負わせます。

すべてのリスナーに個別の体験を提供したいので、曲に名前はありません。 このようにして、リスナーの体験は親密で個人的なものになります。 [gelöscht]は、強烈なノイズ トラックだけでなく、落ち着いたサウンドスケープも提供します。 衝突する周波数と混沌としたドラムの間には、攻撃性、恐怖、絶望だけでなく、勇気、希望、美しさも見られます。 それは最終的にあなたが作ることになるでしょう。

リスナーが自分のリスニング体験を私と共有するか、お互いに共有するかは、リスナー次第です。 それは確かに興奮するでしょう。

 

 

好きなインダストリアルアーティストは?

私にとってこのジャンルで最も重要なアーティストは、間違いなく石川忠です。 彼の音楽は、インダストリアル ミュージックとメタル パーカッションを作ることに私の興味をかき立てました。 彼がいなかったら、私の前身バンドである900RPMは、今のようなサウンドにはならなかったでしょう。今のVERFÜHRERVERGELTERもでしょう。

 

私がとても尊敬しているアーティストは、Puce Mary、Trepaneringsritualen、LINEKRAFTです。 個人的意見では、彼彼女らの作風は自身を際立たせる独自の音楽へのアプローチを持っています。 頻繁にローテーションしつつ最近発見したアーティストは、Spaceship Airguitars、KAOGANAI、F R E E.9 9、Information Overload Unit、およびTankDrum Coです。

 

 

インダストリアル以外で好きなジャンルのアーティストは?

ブレイクコア、特にVenetian SnaresとIgorrrが大好きです。どちらも音楽の天才だと思います。Venetian SnaresのRossz Csillag Alatt SzületettとIgorrrのBaroquecore EPを非常にお勧めします。 私がよく聴いている他のバンドは、Khruangbin、The Prodigy、Red Fang、Anaal Nathrakh Betalmand、Norkh です。

 

 

デジタルリリースはこちら!

 

https://produkt42.bandcamp.com/album/gel-scht

 アルバムのリリースは2023年3月8日(水)。

 

 

<リンク>

 

 VERFÜHRERVERGELTER:

 https://verfuehrervergelter.bandcamp.com

 

 ストリーミング:

 https://audius.co/traumavore

 

 レーベル:

 https://sonicwounds.bandcamp.com/

自作小説『瞬間接着剤サンドウィッチ』

密室の湿度が背伸びをしている。これは擬人法という表現だ。

 
僕は野良猫のようなザラついた灯台代わりの偽物の舌を常に身に纏い所有している。入浴時も就寝時も。食物を体内に取り込まなければならない時期が一日に何度か訪れるのだが、その時点でもまるで瞬間接着剤という文明の利器でくっ付いているかのように手放せない。実を言ってしまうと一度取り外すとかかりつけの医者に裁縫用よりも本格的な糸で縫ってもらわなければならない。しかも一度でも空気の間が開いてしまえば触覚もおまけの味覚ももう戻らない。嘆いても後悔することが安定剤の作用になるぐらいだ。
僕が唇、歯、唇のサンドウィッチの奥に隠した特殊な舌を一直線に貫き、平らにして少しシンキングと瞑想の時間を管理者から貰えさえすれば、計測できる優れ物である。
ただし人間なので数値としては割り出せないので、眼球らが埋まっている全身の中の一つ、広義のパーツを駆使し本能のままに喩えてしまうべきだろう。
 
「ほんの少しだけ」「いや、とても」
 
このような曖昧な表現で己の声帯から湯船の中でする屁による徐々に肥大しては、やがて消滅する泡のように発射される音声。
全て理解を得たような気もしてきた。ただ、それらは全て誇張だったのかもしれない。
悟った次の瞬間僕の意識の中にある唾液の発生源に十割の地割れが発生してしまった。助けを求めるのにオーディオ的に感嘆符を連打しようとしたが間に合わなかった。
あまりの衝撃とストレスに耐えきれない。両鼓膜を目的地に台所用洗剤を挿入してしまえば物心ついた時から何も無かったことにならないだろうか。何も無かったというのは平凡や平和的な順調な積み重ねで今に至る、とは決して異なる。毒にも薬にもならない機械的な飲み食いを提供され、娯楽として書物の読み方だけは教示される生活。学問も労働もせず、幼い頃から運動不足という概念を知らずに一生を終える生活。ただし娯楽は日和見菌扱いとする。
パニックになったところで家族に製氷機から完成したばかりの氷を口に突っ込まれた。ところで何故改行後の前文だけ冷静な判断が出来たのだろう。数秒前瞬きした際だけ事実を認めていたのは自覚している。悲鳴も黄色くない声を出す余裕すら無かった。
 
あなたは、「不覚な笑みを抱えるのは不吉の象徴だ」なんて家族に説教されたことがあっただろうか?もしある人は当時をフラッシュバックし声帯模写することを決して勧めない。
 

 

2021年個人的ベスト ノイズ編

皆さんお疲れ様です。今年はノイズやプログレ、サイケ、ニューウェーブなどの音源をこつこつと集めていました。その中でもノイズ系の今年リリースされた新譜を12枚紹介したいと思います。


12,Rope Society / Am Not – Диархия

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Label:Novichok

 

Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/17157199-Rope-Society-Am-Not-Диархия


スプリット7インチ。Rope Societyは恐る恐る箱の蓋を開封するようなまあまあ細めの糸を連想させるノイズに、エフェクトでディストピア的に演出された声が交わる。Am Notは常に感電して痺れ続ける、視界が晴れず希望も見えないノイズ。

 

11,Will Over Matter – Aviation Hypnosis

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Label:Freak Animal Records


Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/20769871-Will-Over-Matter-Aviation-Hypnosis


オカルトエレクトロニクス。凸凹した荒々しい道を自転車で走行しているような、ミニマルで反復的なノイズの波長が心地良く癖になりそう。まるで原点を思い出させる素晴らしいこれぞインダストリアル。アートワークも物騒で◎。

 

10,

Hate Sermon – Steel Fortress

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Label:Gutter Disease


Bandcamp

https://hatesermon.bandcamp.com/album/steel-fortress


Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/18164368-Hate-Sermon-Steel-Fortress


抑圧的なパワエレ。ノイズらしい白黒の金属的なアートワークが肝。去年の夏から秋にかけて録音されたそう。頭上でヘリコプターが飛んでいるかのような重圧感、耳の奥の鼓膜を破壊しに訪問しそうな鉄製のイヤーピックと見せかけたドリルみたいでパターン豊富。

 

9,Olympic Hopes – Luxor

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Label:Phage Tapes


Bandcamp

https://phagetapes.bandcamp.com/album/luxor

 

Discogs

https://www.discogs.com/release/18360085-Olympic-Hopes-Luxor


歪みに任せいっそエネルギーを抑え込んだ、今にも勢力を広げ、より凶暴になりそうなローファイでそわそわしたアブストラクトな空気感がこちらをじろりと覗いてくる。パワエレパートの声も世界観に浸透している。曖昧さが病みつきになりついおかわりしたくなる。

 

8,Meatpacker – The Possessed

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Label:Total Black


Bandcamp

https://totalblack.bandcamp.com/album/the-possessed

 

Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/19488436-Meatpacker-The-Possessed


ジャケが厚紙で高級感。いつまでも毎晩新月が続くようなシンセをバックに陰鬱とした湿っぽいパワエレ、歪み具合が気持ちいい火花が飛び散りそうなメタルパーカッションの祭典など、散りばめられた10曲が勢揃い。個人的には人気のPacking Plantへのオーダーにもいつか挑戦してみたい。

 

7,scum – Life Sentence

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Label:Aussaat


Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/17379883-Scum-Life-Sentence


次から次へと360度枝分かれし展開していくジャンクションを駆け抜けるような疾走感あふれるハーシュ、底なし沼から必死にもがくような湿ったノイズなど濃い内容。カセット付き限定版もあり。Le SyndicatのZorïnが作成したという新しいロゴステッカーも特典として付属しクール。

 

6,Scopophilia – Violent For Being Sexually Desired

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Label:Old Europe Cafe

 

Bandcamp

https://himukalt.bandcamp.com/album/violent-for-being-sexually-desired

Discogs

https://www.discogs.com/fr/release/20259538-Scopophilia-Violent-For-Being-Sexually-Desired


HimukaltのEster Kärkkäinenと
Military PositionのHarriet Kate Morganによるプロジェクト。内アートワークは服を着ていないセクシーな女性の姿が並ぶ。追い風を受けるようにビートが挿入されたノイズの展開が上手。最新のポストパワエレ(造語)を堪能できる。

 

5,Leah P – Surviving The Familiar

f:id:Kataitoba:20211203082142j:image

Label:Oxen

 

Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/19426501-Leah-P-Surviving-The-Familiar

 

過去には東京と大阪でライブを行っているノイジシャンによるアルバム。ひたすら清潔な水を濡らした汚れに塗れた雑巾から、しぼり取るようなシンセの音色が響くハーシュ。部屋の電気を消して聴いたら大海原で遭難しているような気分を味わえるだろう。

 

4,Blackalphawolf – s/t

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Label:Death in Venice Productions

 

Bandcamp

https://deathinveniceproductions.bandcamp.com/album/blackalphawolf-s-t

 

Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/18201940-Blackalphawolf-Blackalphawolf


アニマルライツ運動を支援するイタリアの匿名パワエレプロジェクトによるセルフタイトル。全体的に声があまり目立たないようイコライザーを調整しているのだろうか。むしろそれが味になっている。ホワイトノイズに近い音が、料理における香辛料の用途のように挿入される場面も。

 

3,Vonsechsundachtzig – Permission To Die

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Label:Unrest Productions


Bandcamp

https://vonsechsundachtzig.bandcamp.com/album/permission-to-die


Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/19008799-Vonsechsundachtzig-Permission-To-Die

 

連続的に放たれるシンセに歌い上げるような語りが特徴的なインダストリアル。別の曲は何km走りもがいても闇が晴れず憂鬱だが、一方で精神を集中できそうで粋な持続音まで。ひび割れのようなノイズも進入してくる。銀色のペンで書かれた100部限定シリアル入り。

 

2,Brandkommando – Opus Nocturne

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Label:Mask of the slave


Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/19792552-Brandkommando-Opus-Nocturne


今年6月に自宅スタジオで録音されたものだそう。ピンク色したカセットとケースの発色が綺麗でずっと眺めていられる。一見ホワイトノイズのような透き通る清潔なハーシュを投球してきたかと思いきや、縄跳びの紐を蛇のようにウネウネさせたみたいな華麗なノイズに変身。

 

1,Hanzo Hasashi – Ikigai

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Label:Flag Day Recordings

 

Bandcamp

https://flagdayrecordings.bandcamp.com/album/ikigai

 

Discogs

https://www.discogs.com/ja/release/18677116-Hanzo-Hasashi-Ikigai


神々しいアンビエントかと思えば秒数を重ねるごとに暴力的になっていく。まるで雄叫びを上げているかのよう。計算されているだろう、ビート無しに舞を踊るスプリンクラー。次々に変化する展開に両目ではなく両耳が回ってしまうかもしれない。カットアップハーシュ好きにもマスト。

 

では良いお年を!

 

 

 

 

2020年個人的ベスト ノイズ編

皆さんいかがお過ごしでしょうか?

今年はCOVID-19が流行ってしまったので例年と比べて遊びに外出した数がかなり減りました。音源を入手できるレコード店、音楽を生で身をもって体感できるライブハウス......もっと楽しめる予定だったのにと後悔しきれない悔いがチリも積もれば山となる。実際ライブに行かなかった空白期間が半年以上あって寂しかったです。

最初のうちは「Current 93にイントネーションが似てる!」と勘違いしていたのに。Cronaca Neraを「コロナ禍ネラ」と勝手に親父ギャグを連想したりもしていました。貴重な人生の活動期間の一部がみるみるうちに自粛で削られていく悲しみよ。

本題に移りますが、

「再発以外で今年2020年にリリースされたもの」

に絞りました。再発で「これは!」とピンと来る良質なリリースはいくつかありましたが泣く泣く掲載しませんでした。

なお英語以外の文字の関係で一部のリンクがはてなブログの仕様上途切れてしまい、そのままでは飛べない可能性があります。お手数ですがその際は一度コピペしてみてください。


12,Plagues – Parasitic Symbiosis

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Label:Nefarious Activities

Discogs

https://www.discogs.com/Plagues-Parasitic-Symbiosis/release/15760867

Nefarious Activitiesではお馴染みのミニCDrでのリリース。それに合わせた小さい紙ジャケットが物珍しくて可愛らしくも感じる。開始すぐ高音でノイズが泣き喚く。吐き捨てるような声も合流しいいところでプツリと途切れてしまう。そしてBの単音を一定の間隔で弾丸のように発射する、全体的に歪んでいるが幻想的な空間に放り出される。ここは一体ディストピアなのかユートピアなのか?おそらくネイティブでも聞き取れないほどエフェクターで加工された言葉はパワエレの様式美だろうか。

11,Institution D.O.L. – The Thelema Tales

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Label:TORM Ent.
Discogs

https://www.discogs.com/Institution-DOL-The-Thelema-Tales/release/14833131

 

オーストリアのインダストリアルプロジェクト。今回はアレイスター・クロウリーが堂々と6パネルデジパックのジャケットを飾っている。ムードをよく演出しているピアノは2020年に同レーベルTORM Ent.から出たコンピレーション、Tormentum Volume I(AlfarmaniaのKristian Olssonがアートワークを担当!)にもトリとして参加しているWolfgang J. Ederが演奏。2015年から2019年にかけてイタリアとオーストリアで製作されたそうだ。ダークでゴージャスなコーラス隊が歌う場面があるのだが打ち込みだろうか?一方で歌モノとして聴けるトラックもあり。最後は神秘的なダークアンビエントでおしまい。

 

10,Throat – Bareback (Stripped & Remasked)

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Label:Kaos Kontrol

Bandcamp

https://ihatethroat.bandcamp.com/album/bareback-stripped-remasked

Discogs

https://www.discogs.com/Throat-Bareback-Stripped-Remasked/release/15760845

 

フィンランドのノイズロックバンドが18年に出したアルバムのリミックス盤。Government Alpha、Black Leather Jesus、Sshe Retina StimulantsからHimukalt、Linekraft、Concrete Mascara、Jaakko Vanhalaなどとラインナップを拝見すればノイズファンはメンバーの豪華さに驚くだろう。なお元のアルバムに金属的なノイズパートを含む曲も存在する。原曲をノイズの漆黒のインクで重ね刷りしている。

 

9,Crawl Of Time – Operation Black Widow

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Label:Fusty Cunt

Bandcamp(Chondritic Soundから同年2020年に再発されたもの)

https://chondriticsound.bandcamp.com/album/operation-black-widow-2
Discogs

https://www.discogs.com/Crawl-Of-Time-Operation-Black-Widow/master/1790483

 

アメリカのTerror Cell UnitのSamuel Torresによるパワエレ。「暴君と奴隷(最大の戦争)」、「束縛する絆」などの題名が並ぶ。持続する低音、それに重なる流暢な語り。地下の洞窟で灯り代わりの蝋燭片手に一人ポツンと佇まるようだ。声が消えた途端ドリルで掘り進めていく。物騒な争い事を遠くからテレビ中継でポテトチップスでも食べながらソファーに横になり、のほほんと監視している、平和な日常を過ごしている一個人としてはそんな気分だろうか。

 

8,Edge Of Decay – Riistettyjen Antologia

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Label:Aussaat

Bandcamp

https://edgeofdecay.bandcamp.com/album/riistettyjen-antologia

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Edge-Of-Decay-Riistettyjen-Antologia/release/15832097

 

最近はVigilantism名義でFreak AnimalよりCDを2枚出すなど活発なフィンランドのノイジシャン。そんな彼が国を跨いでドイツのAussaatからリリース。曖昧なハーシュの煙に奇妙な声が時々視界に見えてくる。同国期待のKovanaも2曲ボーカルで参加している。個人的には夢のようなコラボだ。コンロが点火し始めているようにチリチリした歪んだノイズと融合した声は何処か悲しげなインパクトを含んでいる。

7,Form Hunter – Form Hunter

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Label:Found Remains

Bandcamp

https://foundremains.bandcamp.com/album/form-hunter

Discogs

https://www.discogs.com/Form-Hunter-Form-Hunter/master/1737181

 

Weston CzerkiesとBreaking The WillやKjostadのStefan Auneによる2人組アメリカンハーシュユニットによる記念すべき1stアルバム。できる限り空間を埋め尽くしたいという僅かなペンキの塗り残しも許さない意欲が伝わってくる。如何にも真っ向に直接的な表現を用いているだろう。Found Remainsからリリースされているアルバムはモノクロのジャケットが大半を占めているがこのアルバムは風景写真がよく似合っている。

6,Herukrat – Darkness Over Najaf 

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Label:Total Black

Bandcamp

https://totalblack.bandcamp.com/album/darkness-over-najaf

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Herukrat-Darkness-Over-Najaf/release/14708020


イスラム教に焦点を当てた最近勢いのあるハーシュ/パワエレプロジェクト。激しい銃の打ち合いが始まる。皮切りから物騒なことだ。そして喉の奥から歪みエフェクターを噛んだようなノイズフレーズが行ったり来たりリピートする。野太い声からアウトプットされる叫びも自然と同化していく。Found Remainsから同年2020年に出たタトゥーに身を包んだジャケットが目印のSongs Of Religious Devotionも内容が濃いので合わせて聴いてみてほしい。

 

5,Maskhead – Bizarre Offerings

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Label:Antipatik Records

Bandcamp

https://antipatikrecords.bandcamp.com/album/maskhead-bizarre-offerings-cd

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Maskhead-Bizarre-Offerings/release/15409690

 

フィンランドの匿名ノイズプロジェクト。全身をラバーに包まれたジャケットが購買意欲を煽る。悲鳴のような高音がいきなり耳をスパイクシューズで蹴ってくる。ノーガードだったので危ない。そして女性の声のサンプリングでクールダウンしたかと思えば、さっきよりは慣れたのか衝撃が少ないもののノイズの光線を直撃。しかし油断してたらもっと激しいのが襲ってくるぞ?大音量でノイズのビームを浴びてみたい欲望を持った自分にはぴったりだ。果てにはその反動で派手に吹っ飛んでみたい。保証は必要なので「意識を失わない、建物の壁を壊さない程度に」と注釈を付けるけど。

4,Haus Arafna – Asche

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Label:Galakthorrö

Bandcamp

https://hausarafna.bandcamp.com/releases

Discogs

https://www.discogs.com/Haus-Arafna-Asche/master/1793390

 

待望の新作が登場。このアルバムのリリースをきっかけにBandcampにも降臨した。ちなみにドイツ語の歌詞の内容的にいけないのかSpotifyでは2曲だけExplicitマークが付けられている。あまり鉄の香りがしないビートがタイミングを計算するように規則正しく破裂したと思えば、その次に映像作品の登場人物が疑問を持つシーンで流れていそうなシンセのメロディが夜の水面に浮かぶ。その次には歪ませたノイズとここぞと狙った頃に登場するボーカルがパズルをはめるように組み合わさり、パワエレ芸術が完成する。スタイルのレパートリーは多いのか?確かめてみよう。

 

3,Aprapat / Kovana / Ahola & Silander / Häkki – Kolari II

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Label:EI ARMUA

Bandcamp

<Aprapat>
https://aprapat.bandcamp.com/album/v-a-kolari-ii
<Kovana>
https://kovana.bandcamp.com/album/v-a-kolari-ii-kovana

Discogs

https://www.discogs.com/ja/Aprapat-Kovana-Ahola-Silander-Häkki-Kolari-II/release/15798969

 

フィンランドのノイジシャン4組によるコンピレーション。Pentti DassumとJaakko VanhalaによるHäkkiは置いておきここ最近名前を聞き始めたアーティストばかりだ。Aprapatは数秒の楽曲サンプリングからエネルギーを絞り出すようなノイズと金属音の融合を披露してくれる。Kovanaは2020年にFreak Animalからカセットを出し、この先も期待すべき。ハーシュの山から湧き出る女性パワエレ。Ahola & Silanderはソフトなダークアンビエント。Häkkiはヨレヨレ系で混乱状態に陥りそうだ。Freak Animalからも2020年にTerässinfoniaというフィンランドのシーンを総括したコンピが2枚に分けてリリースされたが、これも地域ごとに今のシーンを知りたい人にお勧めのアルバムの一つ。

2,Dead Eye Terrorist – Building A Hell

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Label:Phage Tapes 

Bandcamp

https://deadeyeterrorist.bandcamp.com/album/building-a-hell

Discogs

https://www.discogs.com/Dead-Eye-Terrorist-Building-A-Hell/release/16272530

 

Bandcampには他に野良猫支援の為の一曲が存在するが、Discogsにも当作品一作しか掲載されていない謎のアーティスト。Instagramのアカウントが存在し、vimeoに1分程度の短めのMVも投稿されている。事故現場のように高音が唸る、見事に完成された美学に基づいたハーシュ&パワエレ。時々割り込んでくる声が待ち遠しくなる。一発目から強烈なインパクトを与えてくる。密度と内容のボリュームは抜群。詳細を知っている人がいたら是非教えてください。某サイトには「私はスペインにいます」との書き込みがあったけど...

 

1,Salò Salon – Culte Du Moi

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Label:L. White Records

Bandcamp

https://salosalon.bandcamp.com/album/culte-du-moi

Discogs

https://www.discogs.com/Salò-Salon-Culte-Du-Moi/release/15417143

 

ドイツのデスインダストリアル兼ダークアンビエントアーティスト。モーリス・バレスによる小説3部作、Le Culte du Moi(自我礼拝)からタイトルを引用したと思われる。荒れた雨雲から今にも雷が降臨してきそうな緊迫した緊張感が張り詰める。しかし外に干してある洗濯物の事など忘れてしまいそうな凛々しさも共に手を繋いでいる。リバーブが効いた反響する場所で奏でる闇の芳香剤。是非ともコンクリート打ちっぱなしの部屋で1人不安になりながら体育座りで聴き、しくしくと涙を浮かべたい。


説明は割愛しますが以下のアルバムも好内容でした。

Taeter with Sektor 304 – The Hermeneutics Of The Hunt Has Gone Full Circle

Grunt – Spiritual Eugenics
Escuadron De La Muerte – Bastion XXIII
Caligula031 – Case Chiuse - Volume 1

STAGGH – Shining Path

Women Of The SS – Femme SS Fatale

[Code/Neda] – Isolation

Shame – White Man

 

今年2020年の年間ベストは以上です。特に年も終わりそうな頃に突如現れたDead Eye Terroristのデビューが印象に残っているというか。これからも応援してゆきたいです。ワールドワイドに様々なレーベルから出してほしい。もしライブも行うなら是非来日してほしいと願ってます。スペインといえばGyakusatsu、Tube Tentacles、Brutalomaniaの来日公演が印象深いしそれに続いてくれ。期待しかない。

本文でもいくつか紹介しましたが、今年は世界各地から出たノイズのコンピレーションが豊作だった気がします。各レーベルごとに個性あふれるラインナップが多数。

ご存知の人も多いかもしれませんがここでBandcampでこの手の音源を探す時に便利なタグを紹介します。「Noise」、「Industrial」だと大雑把だし「Harsh Noise」だとワイドに探ってしまいハーシュ色の薄い、または全く無いものも引っかかってしまう。一方で「Power Electronics」は割とちゃんとパワエレが引っかかってくれます。「Death Industrial」は意外と穴場だったりします。使ってみて。ただしこれらのタグが付いてない隠れノイズも勿論あります。SNSやサイトから飛ぶなど頑張ってください。

まとめてみた感想、正直フィンランド勢を贔屓しちゃったかもしれない。まあそこはあくまでも"個人的ベスト"だから甘く見て許してやってください。Freak Animalが自国のシーンの発展に貢献してるなと実感します。流石Deathspell Omegaでパワエレ界だけではなくブラックメタルシーンでも知名度のあるMikko Aspa。

来年こそはライブに行きまくりたい願望があります。そしてノイズの音源を取り扱うレコードショップにも何回も行きたい。

それでは良いお年を!来年が良い年になりますように。

 

2020年3月15日追記

年末にリリースされた作品の中から気になって今手元にある作品を紹介します。記事を書いた後に出てしまったので。

 

Swollen Organs – Forced Affection

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label: Nil By Mouth

Bandcamp
https://swollenorgans.bandcamp.com/album/forced-affection


アメリカのパワエレ、デスインダストリアル、そしてハーシュノイズプロジェクト。主に2016年から2019年に録音された音源。テーマはマスターベーション、レイプ、「逸脱した」セックスだそう。アートワークから滲み出るいかがわしい極悪っぷりの背中には思わず感心してしまうだろう。赤いインクを塗った上にテープを貼りアザだらけの痛々しいジャケットを固定している。インクがテープからはみ出ているので手が汚れそうで、所有しているのに開封する勇気が湧かない(綺麗好きなもんで)。最初から太陽が完全に隠れてしまい陰の部分だけを表現したような、悪だくみを行っているかのようなハーシュ。そしてウィスパーでセクシーな声が乗ったプロペラが優雅に回転するかのようなノイズが登場。


Human Larvae – Methods Of Submission II

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Label:Cipher Productions

Bandcamp
https://humanlarvae.bandcamp.com/album/methods-of-submission-ii
Discogs
https://www.discogs.com/ja/Human-Larvae-Methods-Of-Submission-II/release/16950561


2005年から活動しているドイツのアーティスト。2017年に同レーベルから出たMethods Of Submissionの続編。録音自体は2018年だそう。黒を基調にした再生ボタンを押さずともとも湧き出てくるノイズの世界観を、辺り一面首がもげるまで勢いよく見回したい。パッケージは革のような物体でできている。ノリでくっついていて剥がさないと開封出来ない凝った仕組み。女性の喋り声が淡い色彩を思い出すノイズに乗車する。誰かと会話しているのだろうか?映画のワンシーン?気になるところだ。リズムよくループするノイズに渋い声も見所。

 

以上です。では!